
Q1
(73歳男性)近医のかかりつけの先生に採血で、前立腺ガン検診をしてもらいました。その結果、PSA 4.8ng/mlであり、主治医の先生から泌尿器科専門医への受診を勧められました。ところで泌尿器科では、どのような検査をされるのですか?
Q2
(42歳男性)他に症状はないのですが、ただ見た目に血尿が続く様になったので心配になりました。実は以前も血尿が出た事は2〜3回はあったのですが、すぐ元のおしっこの色に戻っていましたので気にしていませんでした。かかりつけの先生も、受診の際の検尿で異常がなく、疲れているのでしょうと言われ安心していましたが、大丈夫でしょうか?何か悪い病気でしょうか?
Q3
(48歳男性)今まで1年〜2年に1回は尿管結石による痛みで苦しんでいます。いつも突然痛み始め、仕事にも差し障りがあり困っています。主治医の先生からも‘水分をよく取って下さい’の一言で片づけられますが、何か他にいい手段はないでしょうか?
Q4
(40歳女性)3人の子供を出産してから体型も変わり、出産前と比べると約20kg体重が増えてしまいました。それとともに咳、くしゃみや重い物を持つ際に尿漏れに気付く様になりました。しかし最近漏れの量も増えてパッドをつけて外出する際にも、下着まで汚しそうで気になります。何か良い方法はありますか?
Q5
(65歳男性)10年前頃よりおしっこの勢いがなくなってきたかなと思っていましたが放置していました。ところがつい最近、息子夫婦の帰省で調子に乗ってアルコールを取りすぎてしまい、夜中におしっこが出なくなり、下腹部もパンパンで苦しく救急病院にかかりました。その際に、導尿され‘1000ccおしっこがたまっていましたよ’と言われ、おしっこの管を入れられたまま帰宅され今に至っております。管の痛みもあり、この先どうなるか不安です。治療方針を教えて下さい。
Q6
(38歳女性)頻尿で近医を受診して膀胱炎と診断され、抗生剤を頂いたのですが症状の改善が認められません。その後も色々と医院、病院とかかったのですが同様の診断で抗生剤を頂くだけで、やはり症状の改善がありません。このまま抗生剤を飲み続けなければならないのでしょうか?
Q7
(43歳男性) 最近、性生活がうまくいかず悩んでいます。以前は週1回のペースで妻とのセックスを楽しんでいたのですが、1年程前より仕事でのストレスのせいか性的興奮はあるものの途中で駄目になってしまう事が多くなり、次第にセックスレスになってしまいました。もちろん、妻のことが嫌いになったり、他に好きな女性が出来た訳でもありません。このままセックスレスでは妻にも悪く、それを考えると更にストレスになってしまいます。何か良い治療はあるのでしょうか?

Q1
(73歳男性)近医のかかりつけの先生に採血で、前立腺ガン検診をしてもらいました。その結果、PSA 4.8ng/mlであり、主治医の先生から泌尿器科専門医への受診を勧められました。ところで泌尿器科では、どのような検査をされるのですか?
A1
PSA( Prostatic Specific Antigen: 前立腺特異抗原 )が高ければ全て前立腺ガンを疑うかというと、そうではありません。前立腺炎や前立腺肥大症などでもPSAが上昇している症例は多く見受けられます。先ずは、直腸診やエコー検査等で鑑別を行い、それでも前立腺ガンが強く疑われる場合は、経直腸的前立腺エコー検査(おしりからエコーの機械を入れての検査)にて前立腺を詳しく観察します。その後、エコーガイド下に前立腺の組織を針で採取する生検検査(前立腺針生検術)にて確定診断を得ます。採取した組織を病理検査(顕微鏡にて診断する)で確定診断をしますので、結果が1〜2週間程で出てきます。生検検査は針で組織を採取する為、出血の要素(下血、血尿など)もあり、施設によって検査後の体制(入院を要するか否か)は様々ですが、当院では午前中に生検術を行い、夕方(生検をして約6時間後)問題なければお帰り頂く様にしております。逆に、前立腺ガンの疑いが低い様であれば、3〜4か月毎にPSAを再検して経過を診る事もあります。(PSA 4.0ng/ml以上の場合、年に3回までしかPSAは算定出来ませんので…)その結果で、上昇傾向がある様であれば、やはり前立腺ガンの疑いが高いという事になりますので生検術を行う事が望ましいと思われます。いずれにせよ泌尿器科専門医と十分に話し合って方針を決定される事をお勧めします。
Q2
(42歳男性)他に症状はないのですが、ただ見た目に血尿が続く様になったので心配になりました。実は以前も血尿が出た事は2〜3回はあったのですが、すぐ元のおしっこの色に戻っていましたので気にしていませんでした。かかりつけの先生も、受診の際の検尿で異常がなく、疲れているのでしょうと言われ安心していましたが、大丈夫でしょうか?何か悪い病気でしょうか?
A2
お話から推測しますと恐らく膀胱ガンの可能性が高いと思われます。検尿のみでは、膀胱ガンまで分からない事も多々あります。尿沈査や、尿細胞診、エコー検査などでふるいにかけますが、やはり膀胱鏡ファイバー(カメラ)による膀胱内の検査が必要と思われますので、泌尿器科専門医への受診をお勧めいたします。男性にとっては痛みを多少伴う検査ですが、最近は男性に対しても痛みを軽減できる軟性膀胱鏡を置いている施設もありますので、御相談されてみて下さい。腫瘍が見つかれば、CT, MRIといった検査で深達度を推定し、腫瘍のstage(段階)を見極めて治療方針を決定していきます。腫瘍の根が浅ければ、場合によっては経尿道的な切除(内視鏡による切除:お腹にメスを入れない手術)のみで完全にガンを取り除く事も可能です。膀胱内で再発する事も多く、術後の病理結果によっては、抗ガン剤,BCG等の膀胱内注入療法を行う事もあります。腫瘍の根が深ければ、実際に経尿道的な切除を行い、腫瘍の組織を病理検査(顕微鏡による確定診断)し腫瘍の深達度、異型度(顔立ちの悪さ)を確認して、膀胱全摘術や、抗ガン剤、放射線などの治療方針を検討していきます。その際、当然転移の有無の検査も必要となります。
その他、膀胱ガンでなくとも出血源を同定する事が必要です。膀胱鏡ファイバーによってまず調べ、前立腺から出血しているケースもありますし、下部尿路(膀胱、尿道)に異常がなく、上部尿路(腎、腎盂、尿管)から出血している事もあります。上部尿路からの出血であれば場合によっては、腎盂尿管鏡検査にて出血点を同定する事もあります。
Q3
(48歳男性)今まで1年〜2年に1回は尿管結石による痛みで苦しんでいます。いつも突然痛み始め、仕事にも差し障りがあり困っています。主治医の先生からも‘水分をよく取って下さい’の一言で片づけられますが、何か他にいい手段はないでしょうか?
A3
上部尿路結石症も飲水指導、生活指導、食事指導、薬物療法によって再発率を抑える事が可能です。まず尿管結石による痛みが出現している際には、基本的には鎮痛剤などで様子を診ていきますが、結石のサイズ,形状などにより自排石が困難な症例もありますので、結石の長径が5mmを超えるような場合は泌尿器科専門医に受診された方が宜しいかと思います。自排石が困難と思われる症例に関しては、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)や経尿道的結石破砕術(TUL)、経皮的結石破砕術(PNL)といった外科的手術を要する事もありますが治療費も高い為、再発予防に努めて頂く事が大切です。まずは、自排石した結石又は破砕片を必ず捉える事がまず必要です。捉える事が難しい場合も多々あるかと思いますが、おしっこを毎回茶こしやザルにしてもらいます。(カルクキャッチという便利な器具もあります。)結石もしくは破砕片が採取されれば、その結石が何から構成されているか結石分析によって調べます。その成分によって、再発予防の為の食事指導、薬物療法などを行っていきます。例えば、上部尿路結石症で一番多い結石成分であるシュウ酸カルシウム結石に関しての再発予防としましては、シュウ酸を多く含んだ食べ物の摂取(ほうれん草、アスパラガス、タケノコ、大根、チョコレート、ピーナッツ、ブラックコーヒー、ココア、紅茶等)を制限するか、摂取する際にはカルシウム(牛乳、かつお節、ちりめんじゃこ等)を含んだ食材と一緒に摂るなどの工夫が必要です。又、尿をアルカリ化する事が結石形成の抑制につながります。食材としては、海藻類、緑黄色野菜やクエン酸を多く含むもの(お酢、レモン、グレープフルーツ、梅、等)が有利に働きます。まだまだ色々ありますが、当院では各々の結石成分によって再発予防にも力を入れていますのでお悩みの方はご相談下さい。
Q4
(40歳女性)3人の子供を出産してから体型も変わり、出産前と比べると約20kg体重が増えてしまいました。それとともに咳、くしゃみや重い物を持つ際に尿漏れに気付く様になりました。しかし最近漏れの量も増えてパッドをつけて外出する際にも、下着まで汚しそうで気になります。何か良い方法はありますか?
A4
骨盤内の臓器(膀胱,子宮,直腸など)を支えているハンモックの様な骨盤底筋群が緩んでくると、尿道の可動性が出現し、おなかに力が入った時の尿漏れ(腹圧性尿失禁)につながると言われています。基本的には、それらの筋肉群を骨盤底筋体操(様々な姿勢で、肛門と膣を締める体操)で毎日鍛える事が必要です。ただし、効果が出てくるのに少なくとも1〜3か月はかかりますので、諦めずに続ける事が必要です。なかなか続けられない方には機械の力を借りて鍛える方法もあります。骨盤底電気刺激法にも様々ありますが、保険適応となっているのは干渉低周波による治療(ウロマスター)のみであり、その他の方法は保険適応外となっています。当院でもウロマスターを導入しておりますが、軽症から中等度の腹圧性尿失禁の患者さまにはかなりの効果が得られています。実際にパッドが不要になり、外出が苦にならなくなった方もかなりいらっしゃいます。ただし効果には個人差もあり、重症の腹圧性尿失禁の患者さまには効果が乏しい場合もあります。そのような場合は、尿道の可動性を抑える為の手術療法(尿道スリング手術)を選択します。当然、術前に適応があるか否か検査を行って調べた後に選択する訳ですが、この手術はTVT(Tension-free
Vaginal Tape)と言われ、尿道の後面にメッシュを当て尿道をサポートします。世界中でも70万件を超える症例が既に行われており、長期成績も7年で完治81%,改善16%と良好です。ただし、稀に重大な合併症を起こす事もあり、2001年TOT(Trans-Obuturator
Tape)という術式が報告されて以来、その合併症を回避する為に、このTOTがTVTに代わる勢いで行われています。日本でも、徐々にこの術式を選択している施設が増えてきています。これらの手術は、侵襲度も低く良い治療法です。それと、体重を減らす事も有効ですので、ダイエットを試みる事も良いでしょう。
Q5
(65歳男性)10年前頃よりおしっこの勢いがなくなってきたかなと思っていましたが放置していました。ところがつい最近、息子夫婦の帰省で調子に乗ってアルコールを取りすぎてしまい、夜中におしっこが出なくなり、下腹部もパンパンで苦しく救急病院にかかりました。その際に、導尿され‘1000ccおしっこがたまっていましたよ’と言われ、おしっこの管を入れられたまま帰宅され今に至っております。管の痛みもあり、この先どうなるか不安です。治療方針を教えて下さい。
A5
お話より推察致しますと、前立腺肥大症に伴う尿閉(排尿困難)を来たしたものと思われます。今現在おしっこの管(カテーテル)が膀胱内に留置されている状態という事ですので、α遮断薬といった前立腺部尿道を広げる作用のある薬を服薬してみてカテーテルを抜去して自排尿が出来うるか確認します。自排尿が可能となっていれば一先ずは安心ですが、その後に前立腺ガンも含めた(Q1参照)前立腺の検査が必要となります。自排尿が困難な場合は、再度カテーテルを膀胱内に留置するか、カテーテル留置が耐えられない方には自己導尿の手技をマスターして頂き、間欠的に御自身で導尿して膀胱内の尿を排出してもらいます。自己導尿のメリットは、カテーテルを留置している訳ではありませんので、今後自然に排尿が出来るようになるか判断できるという事です。どちらも難しい場合、近い将来に手術も考慮して術前の検査に入ります。前立腺ガンの否定は必要ですが前立腺肥大症に対しての手術は、経尿道的前立腺切除術(TUR-P)が主流となっています。ただし、手術を受ける事の出来ない方(合併症や抗凝固療法が止めれない等)には、局所麻酔で施行可能な尿道ステント留置術も治療の選択肢に入ります。いずれにせよ泌尿器科専門医とよく話し合って方針を決定される事をお勧め致します。
Q6
(38歳女性)頻尿で近医を受診して膀胱炎と診断され、抗生剤を頂いたのですが症状の改善が認められません。その後も色々と医院、病院とかかったのですが同様の診断で抗生剤を頂くだけで、やはり症状の改善がありません。このまま抗生剤を飲み続けなければならないのでしょうか?
A6
基本的には、検尿、尿沈査にて尿路感染の確認は必要です。女性の場合、膣の分泌物が尿に混在して尿路感染といわれるケースもありますので注意が必要です。漫然と膀胱炎に対し抗生剤を飲み続けるのは、あまりお勧めは出来ません。基本的に膀胱内に腫瘍(ガン)や結石などの基礎疾患を有していないか尿細胞診、エコー、膀胱鏡検査等にて確認します。基礎疾患を有する場合は、それらの治療が優先されます。基礎疾患を有さない場合、過活動膀胱という病態もあり最近は特に注目されています。このケースもこの疾患が疑われます。頻尿、尿意切迫感(我慢する事が難しい強い尿意)が主な症状で、薬物療法(抗コリン剤)が奏効するケースが多いです。しかし副作用もあり処方できない場合もあります。その他の治療法としては、行動療法として膀胱訓練(おしっこを我慢する訓練)をしたり、骨盤底電気刺激法などがあります。その中でも干渉低周波治療(ウロマスター)は副作用もなく保険適応となっている有効な治療法のひとつです。また過活動膀胱の鑑別疾患として間質性膀胱炎という病態もあります。この疾患は、膀胱容量が小さくなるため頻尿になり、蓄尿時に膀胱部に痛みを生ずるといった症状を有する事が多いのですが、前述の抗コリン剤では効果が乏しく治療に難渋します。有効な治療法としては膀胱水圧拡張術などが挙げられますが、効果持続期間も個人によって様々です。つまりこれらの病態の場合、抗生剤の投与は無意味となるため、適切な診断のもとに治療を行う必要性があります。膀胱炎症状が長期化している方は、是非泌尿器科医での専門の治療を受けられることをお勧めします。
Q7
(43歳男性) 最近、性生活がうまくいかず悩んでいます。以前は週1回のペースで妻とのセックスを楽しんでいたのですが、1年程前より仕事でのストレスのせいか性的興奮はあるものの途中で駄目になってしまう事が多くなり、次第にセックスレスになってしまいました。もちろん、妻のことが嫌いになったり、他に好きな女性が出来た訳でもありません。このままセックスレスでは妻にも悪く、それを考えると更にストレスになってしまいます。何か良い治療はあるのでしょうか?
A7
このケースはED(Erectile Dysfunction:勃起不全)と思われます。EDとは、加齢、ストレスなどの精神的要因や生活習慣病などが原因となり勃起能力が低下する事を言います。つまり、性欲はあるけれど興奮しても勃起しなかったり、勃起しても十分硬くならず、また持続出来ない等 満足な性行為を行えない状態を言います。EDと診断される男性は、成人男性の約24%、50,60代では約半数と言われ10年前の約4倍にも増加しているという統計データもあります。治療方針も進化しており、かつては器具を使って勃起を促したり、ペニスに注射をしたりとストレスの大きいものでしたが、数年前に性交の前に服用すれば性的刺激によって自然な勃起を起こす画期的な内服薬が発売され、現在のED治療における第一選択肢となっています。しかし基礎疾患によっては、服用出来ないケースもあります。又、EDは治療する事で多くが治癒するとも言われておりますので、悩むより前に先ずは医師に相談して下さい。当院でも出来る限り話しやすい環境(マンツーマン)を整えていますので、気軽にお立ち寄り下さい。